性感染症(STD)の種類と主な症状

梅毒・淋病・軟性下疸・第四性病(鼠経リンパ肉芽腫)の4つは日本の性病予防法によって、性病と定められている。これ以外にも性行為感染症として、クラミジア感染症、淋病、非淋菌性尿道炎、外陰ヘルペス、トリコモナス症、カンジダ症、疥癬、毛じらみ、梅毒等がある

 クラミジア淋病トリコモナス尖圭コンジロームカンジダヘルペス毛じらみ梅毒

■クラミジア 女性は症状がわかりにくく、世界中で最も増えてる。

【症  状】
女性は黄色っぽいおりものや排尿時の痛み程度で、症状が現れないことが多い。男性は尿道炎のような症状。尿道炎は、おしっこをすると痛かったり残尿感があったりします。
【原  因】
微生物が感染の原因。最近急増している。
【治  療】
病原体に対抗する抗生物質を使って2週間以上症状に合わせた治療を。

非淋菌性尿道炎。クラミジア・トラコマチスという菌によって起こり、アメリカではSTD患者数のトップを占めるほどで、我が国でも最近かなり増えてきている。
このククラミジア、女性に感染した場合、やっかいなことに最初はハッキリとした自覚症状が現れないことが多く、たとえ症状があっても黄色いおりものが出るくらい。そのうえ潜伏期間が10〜20日と長いこともあって、感染に気ずかないままパートナーに移してしまうケースが多い。
その上、口を使っての行為で喉へ感染してしまうことも。
感染したまま放っておくと、女性の場合はクラミジアが膣からだんだんと内部へ入り込み、子宮頸管炎、卵管炎、骨盤内膜炎などの原因となって、不妊、子宮外妊娠、流産につながるケースもある。
男性が感染した場合は、尿道炎や副睾丸炎を起こし、治療を怠るとやはり不妊の原因になることもある。
検査は検尿、あるいは尿道(または子宮頸管)に綿棒などを入れて分泌液を擦り取る抗原検査や、血液検査で抗体検査などを受ける。早めに治療をすれば抗生物質や抗菌剤で2週間ぐらいで治るが、重傷になると長引くことになるのでいずれにしても、早めの対処を。

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■淋病 クラミジアとともに最近増えてる。

【症  状】
女性は膣口から黄緑色いろの膿が出る。男性は、尿道口から膿が出る。
【原  因】
セックスやキスなどによる淋菌感染。のどに感染すると、咽頭炎に。
【治  療】
抗生物質や抗菌剤の投与によって治療。

セックスによって感染する病気のなかでは、一番発生率が高く、若い人を中心に増加中。
淋菌が感染すると2〜7日後に症状が出はじめる。症状といっても、特に激しいものではないので、気ずかずに慢性化させてしまう人もいる。淋菌によって、子宮頸管や内膜に炎症が起きウミのようなおりものが出てくる。これに気ずかず見逃してしまうと淋菌はどんどん広がって大変なことになる。
尿道に入って尿道炎を起こすと排尿障害が起き、さらに骨盤内炎症、バルトリン腺炎、卵管炎などを起こし、不妊の原因にもつながる。また淋菌は目に入ると失明を起こし、血液中に入ると関節炎や心のう症などを起こすこともある。
検査は検尿、あるいは尿道(または子宮頸管)に綿棒などを入れて分泌液を擦り取る。女性の場合は膣内の細胞組織を顕微鏡で検査する。慢性性の場合は検出率が低いので培養検査を行う。
治療は約2週間程抗生物質を飲んだり、注射をすることで治すことができる。淋病の治療の間セックスは厳禁。また、入浴で人に移すこともあるので、配慮が必要。

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■トリコモナス 悪臭をともなう。黄色いおりものが特徴。

【症  状】
強いかゆみとおりもの。患部がただれて痛い。
【原  因】
トリコモナス原虫が原因。さらに淋病やクラミジアに感染してしまうことも。
【治  療】
飲み薬や軟膏、膣の座薬で、完治までに2週間ほど。

トリコモナス原虫という小さな虫が膣内に寄生するために起こる膣炎で、この虫の保有者はわりあいに多く、何かのきっかけで発病すると考えられる。17歳〜65歳くらいまでの広範囲な年齢層に起こる。
トリコモナス膣炎にかかると、悪臭のする濃い黄色のおりものが多量に出てくる。このおりものには、小さな泡が混じっていることが多い。この多量のおりもので外陰部がただれてかゆくなったり、痛くなったりということも起こる。
トリコモナス膣炎は、膣のほかに子宮頚管や膀胱、尿道などにも広がっていく。尿道にまで炎症が達すると、排尿時に痛むようになる。
検査は膣粘膜(あるいは尿道内)を綿棒で少し取り、顕微鏡で原虫の存在を確認する。
治療は膣に座薬を入れたり、外陰部のただれに軟膏を塗ったりして2週間ほど続けるが、いなくなったと思っていた原虫が膀胱などに潜んで生き残っていた場合、すぐに再発する。この場合は経口剤投与が必要。再発防止のためにも徹底的に治療したほうが良い。男性は内服薬のみ。

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■尖圭コンジローム 小さいイボが多数発生。子宮頸ガンとの関連も。

【症  状】
小さなイボが外陰部にたくさんできる。
【原  因】
ヒトパピローマウイルスが原因。湿った外陰部に繁殖する。
【治  療】
電気メスや冷凍療法で患部の組織を取り除く外科的治療と治療薬による治療方法があります。

これは乳頭腫ウイルスの直接感染によって生じる、一種の性行為感染症のひとつです。
女性では、外陰部から肛門部にかけて、男性では肛門部周囲に感染し、強いかゆみを持ったイボが無数に出来ます。掻くと出血し、汁を出し肛門周囲が湿った感じになります。細菌感染を併発すると膿を生じます。
治療法としては、根治するには麻酔をして電気メスなどで焼き切るしかありません。他には、冷凍凝固療法や抗癌剤の軟膏を使うなどですが、どの治療でも再発する可能性が高く、何回か治療を重ねなければ根治しません。

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■カンジタ 白いおりものとかゆみ。セックス以外でも感染。

【症  状】
カッテージチーズのような白いおりものが出る。
【原  因】
カビの一種、カンジタ菌が原因。体の抵抗力が落ちたときにも発病。
【治  療】
抗菌剤の膣薬や軟膏を処方。完全に治さないと、再発の可能性が。

カンジダというのは真菌類というカビの一種。膣や口、喉、気管支や肺、腸などにも寄生し、知らないうちに体内にかかえていることも多い。
寄生すれば必ず炎症を起こすわけではないが、妊娠中、ピルを常用、糖尿病などの場合に発生しやすい。
また、身体が衰弱しているときや、風邪などの治療のために抗生物質の薬を服用していた後にかかることもある。これは抗生物質をのんだことで膣内の浄化作用の働きをするデーデルライン押菌という菌が死んでしまうため、有害な菌であるカンジダが繁殖してしまう。これに感染して、カンジダ膣炎やカンジダ外陰炎といった炎症を起こすと、カッテージチーズのような白いポロポロしたおりものが多量に出でくる。悪臭はしないが、症状が進むと外陰部のかゆみがひどくなり、ただれたり痛くなったりする。清潔にしようと、石鹸で外陰部をていねいに洗ったりするとよけいにひどくなってしまうというのが特徴。清潔にするのはよいが、この場合石鹸は使わず、洗いすぎないこと。
治療は膣内に座薬を入れたり、軟膏を塗ったりするが、カンジダはかなりしつこいカビなので、完全に退治するまで治療しないと再発する。その場合、経口剤の服用も必要。

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■へルペス 痛みと熱を持った水疱ができる。

【症  状】
水疱から潰瘍に。激しい痛みで歩くのも辛いほどに
【原  因】
ウィルス感染、過労やストレスが発病のきっかけになる。さらに淋病やクラミジアに感染してしまうことも。
【治  療】
抗ウィルス製剤を投与。約2〜3週間は必要。

ヘルペスというのは、小さい水疱が集まった状態の疱疹のこと。ヘルペスウィルスには『単純疱疹』と『帯状疱疹』があり、それぞれにウィルスが異なる。
単純ヘルペスウイルスによる感染は外陰部に発病するヘルペスウイルスU型、口の周りに発病させるものはヘルペスウィルスT型といわれている。
U型は主にセックスによって感染するが、特に体調の悪い時にかかりやすく、オーラルセックスによって口の周りにU型ヘルペスができるケースもある。発病すると外陰部や膣内に熱感があり、2週間くらい経つと米粒大の水疱が出てくる。この水疱が10個近くに増えてくると、水疱が潰れて潰瘍となり、表面に膜ができる。こうなると下着が触れたり、排尿しただけで激しく痛むようになる。
別種の帯状ヘルペスウイルスでは唇の周りに出来る口唇ヘルペスや腹部に出来るものもある。
治ったように見えても神経節に潜伏し、発熱、疲労、性交などの刺激や免疫の低下により再発することがあるため慢性化しやすい。但し、潜伏中(治癒後も含めて)で発症していない状態の時は感染しないとされている。一般的に性交渉により感染するが、手や物に付着したウィルスも数時間感染力があると言われる。保菌者が口中に感染している場合はキスなどの接触でも感染の恐れがある。
妊娠中にかかった場合、胎児が膣を通るときに感染し、胎児の生命にかかわる場合がある。
検査は患部の組織をわずかに取り、電子顕微鏡または培養により、ウィルスの存在を確認する。治療は、抗ウィルス剤の点滴と投薬、抗生物質の投与や鎮痛,消炎作用のある軟膏を塗るなどとなる。

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■毛ジラミ 陰毛などに寄生しておこる男女共通のもの

【症  状】
陰毛の生えている部分の皮膚にかゆみをともなった発疹を生じます。
【原  因】
セックス以外にも衣服、寝具の共用や、不潔なタオルからも感染します。
【治  療】
患部を石鹸で洗うだけでは治りません。皮膚科へ行き、治療を受けましょう。

毛じらみは人の陰毛や外陰部皮膚を特異的に好む習慣を持ち、1日数回吸血して1日に2〜3個の卵を産みます。この吸血によりかゆみが出現します。
皮膚面や陰毛では虫体は褐色の点状に付着しています。また、卵が毛と皮膚に白く点状物として付着しているのが見えます
。駆除剤などを使って成虫を除去し、卵も除去してしまえば、治療は完了したことになります。

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■梅毒 キスやぺッティングでもうつります。最近感染者が増加しているとの報告もあります。胎児にも感染します。

【症  状】
先天梅毒 梅毒に感染した母親から胎盤を経由して胎児に感染する。学童期、思春期になって歯、皮膚、中枢神経などにさまざまな病変を来たす。このため産婦人科では妊娠早期に母体の梅毒の検査をしている。
後天梅毒
第1期
感染後、平均3週間くらいで梅毒トレポネーマの侵入部分から小さな固まり(しこり)ができます。しかし、痛みはありません。
第2期
感染後、平均3ヶ月くらいたつと、全身に特有な発疹(バラ疹)があらわれます。同時に発熱や頭痛、脱毛などがおこります。第2期は約3年間で、この間に数回このような症状が現れます。
第3期
この時期になると、皮膚や、筋肉、肝臓などにゴム腫といわれるゴムのように弾力のある腫れが生じます。そして全身のがすこしずつ侵されていきます。
第4期
感染後10年〜20年で脊髄や脳が侵されます。歩行障害、進行性麻痺(知能、記憶、判断力の低下)、言語障害などを引き起こします。
【原  因】 梅毒トレポネ−マという病原体が原因です。性交による感染が有名ですが、輸血による感染や胎児感染なども報告されています。しかし血液を3日間ほど冷蔵保存すると、梅毒トレポネーマは死んでしまうので最近では血液感染はありません。
【治  療】 治療の基本はペニシリンの内服である。ペニシリンは梅毒トレポネーマに感受性が高く、未だ耐性の報告もないために第1選択薬剤として用いられ、確実な治療効果を発揮する。 
投与期間は第1期梅毒で2〜4週間、第2期梅毒では4〜8週間、第3期梅毒以降は8〜12週間内服することが一般的である。投与方法は内服療法と注射療法と比較して、両者の治療効果に差がほとんどないために現在では、内服が主になっている。

梅毒血清反応(血液検査)で無症状の梅毒も診断が可能である。ただし感染の機会の後4週間経過しないと診断的価値は無い。
STS法(ガラス板法、RPRカードテスト法、凝集法)とTPHA法を組み合わせて診断する。
STS法は擬陽性に出ることがる。TPHA法は現在治っていても陽性に出ることがある。これらの場合の判断は医師によく聞くと良い。

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